【機能・便益の階層とイノベーション】
これを読んでくださっている多くの方には、1,2ヶ月に一度くらいのペースで、自分で何を買うかを決めて買っているものがあると思います。女性は多分多いですよね。化粧品、日用雑貨、調味料など。男性も髭剃りの歯や、最近でしたらマイシャンプーやマイスキンケアなどを定期的に買われている方も増えてきていると思います。
そこで、皆さんに2つ質問です。①その商品を買っている理由はなんですか?思いつく限り、メモ用紙などに書き出してみてください。②挙がった理由に優先順位を付けてみてください。例えば、シャンプーなら「汚れをさっぱり落とす」と「香りがよい」、このうちどちらが自分に取って、より重要でしょうか?
こうして改めて整理してみると、気付かれる方も多いと思いますが、商品が持つ機能・便益には階層があります。階層の下から①安心安全、②そのカテゴリーの基本便益、③そのカテゴリーの付加便益となります。
①は当たり前すぎて意識しない人が多いです。ふぐの肝みたいに「美味しいけど食べたら死ぬ可能性あり」と言われると、普通は食べないですよね。②はその商品を使うメインの理由です。例えば、洗浄剤であれば「汚れを落とす」。香りはいいのだけれど汚れが落ちない洗剤やシャンプーはなかなか買いにくいですよね。③はプラスアルファの機能。香りがよい、パッケージデザインがよい、除菌ができる、などです。
これだけ世の中が成熟してくると製品や開発の焦点が③にあたりがちです。基本的な機能はみんな満足している、何か新しい切り口がないか、と考える人が多いです。例えば、アリエールであれば、除菌、消臭、部屋干し、ダニよけと清潔路線でどんどん付加価値をつけています。でも、多くのプレイヤーが③に焦点を当てている時こそ①や②でイノベーションを起こせないか、検討することをお勧めします。
台所用洗剤のジョイは競合が「手に優しい」という付加価値に集中している時に「油汚れに〜ジョイ!」と②で革新を起こしあっという間にシェアトップになりました。「汚れ落ちってこんなものよね、それなら手に優しい方がいいわ。」と思っていた消費者が、もっと汚れが落ちると言われて「え、そうなの?じゃあ、そっちがいいわ。」となったわけです。そして、ジョイは競合が汚れ落ちを訴求し始めたら、「スポンジの除菌ができる」と③の便益を提供し始めました。常に半歩先を行っていたわけですね。派手ではないですが、これも立派なイノベーションだと私は思います。
皆さんもご自身が参入している商圏・市場で今は②と③のどちらが主になっているかを理解してみて、その反対側で新しい、あるいはよりよい機能・便益を提供することを目指してみてはいかがでしょうか?